ペンタブレット
昔、高校に上がりたての頃の話。
「ペンタブレット」というものに、私は昔から憧れがあった。
機械好きということもあり、昔お絵描きが好きだったということもある。
ともかく貯めたお小遣いでペンタブレットを買おうとした。
私の家では、お小遣いの使い道は親に許可を頂かなければならなかった。
「すみません、ペンタブレットというものを買いたいのですが、買わせていただいてもよろしいでしょうか?」
タイミングを見計らって恐る恐る父にお願いし、なんとか電気屋でタブレットを選ぶことになった。
電気屋にいくと、いくつかのタブレットが並んでいた。どうやら同包されているソフトがモノによって違うらしい。
フォトショエレメンツが付いてくるやつと、コミスタ(だったきがする)が付いてくるやつがあった。
私はコミスタの付いた箱に手を伸ばした。
アートよりもアニメっぽいものの方が好きだったからだ。
後ろで父が、ため息を付いた。
「お前が描きたいのって、そんな(くだらない)モンなんだ?」
ため息をつきながら、嫌悪感を浮かべた顔で父は言った。
ステラレタクナイ
「…ごめんなさい間違えました」
血の気が引いた。
サッと箱を戻し、フォトショのついたアーティスティックな箱をとった。
「ふうん」
「すみませんでした」
私はアニメも漫画もこわくなった。描くことはもっと怖くなった。
物心ついた時、私と目を合わさない父を見て、この人に捨てられたら生きていけないんだなと思った。
この人に嫌われたら、殺されるんだなと思った。
小さい時から、父にとっての「いい子」であることが、生きていくための条件だと思っていた。
父の機嫌を損ねてしまった日は、今日眠ったら、寝ているうちに刺されるかもなと怯えていた。
寝ている父を見て、なんなら殺される前に殺してしまおうかとさえ思った。
私の基準は、親にとって良い子であるかどうか、だったと思う。
捨てられたら、
今日親が帰ってこなかったら、
寝ている間に首を絞められたら?
きっといつも、怖かったんだと思う