夜間飛行
深夜の飛行機に乗って、ジョグジャカルタの街を後にした。眼下には極彩色の夜景が広がる。
大通りを行き交う車が連なり、脈を打つ。大通りは動脈。毛細血管が無数に広がり、街は静かに息づいている。
信長や秀吉、家康さえ夢想だにしなかった世界に、私はなんの苦労もなく至った。
「夜間飛行だね」
呟くように話しかけると、友はにやりと笑った。
きっとこの視点は、人よりも神に近い。私は神を知らない。それでも私は、間違いなく何者かに「生かされて」ここにいる。
地上数百メートルから見下ろせば、人の姿など虫のさざめきに過ぎぬ。愛し合おうが、殺し合おうが、たいした問題ではないのだ。
同じ時代に生まれた、私よりもはるかに有能な人間が、若い人間が、何人も死んでいく。世界は徹頭徹尾、不平等だ。有能な人間が早死にしたところで、それすらこの視点から見るならば「たいしたことはない」のだろう。
無数に蠢く生命体の、そのいくつかが世界を繋げるならば、それで未来は繋がってゆく。そんな存在に化ける一抹の、ほんのわずかな期待と見込みのもと、私は今日も生かされたのだ。